三菱自動車と同社のモータースポーツ統括会社MMSPは、9月29日(木)〜10月2日(日)に北海道で開催される2005年FIA世界ラリー選手権(WRC)第13戦ラリー・ジャパンに、「チーム三菱自動車モータースポーツ」から3台の『ランサーWRC05』で参戦する。出場ドライバーは、ハリ・ロバンペラ(フィンランド)、ジル・パニッツィ(フランス)、ジャンルイジ・ガリ(イタリア)で、三菱自動車としては初めての参戦となる母国開催のWRCイベントでの上位入賞を目指す。
通常のWRCシリーズ戦では、マニュファクチャラー選手権のポイントを獲得できるのは2台までに限られているため2台体制で出場しているが、三菱自動車にとって、今回は、母国・日本で初めて臨む記念碑的な一戦であり、契約ドライバー全員を送り込む、まさに総力体制で臨むことにした。
「チーム三菱自動車モータースポーツ」の代表で、MMSPの社長を務める鳥居勲は、「昨年はチームを建て直すために活動を一時休止し、その結果、日本でのWRC初開催となったラリー・ジャパンに出場することができず、非常に悔しい思いをしました。それ以上に、普段から三菱自動車チームを応援して下さっているファンの皆様には大変申し訳ないことをしてしまいました。その分、今年のラリー・ジャパンでは3台体制を敷き、普段よりもさらに大所帯で日本に乗り込みます。ラリー・ジャパンは三菱自動車にとって最も大切なイベントであり、今シーズンはこのラリーをターゲットにマシンの開発を進めてきました。日本で最高のパフォーマンスをお見せできるよう全力を尽して戦いますので、ご声援をどうぞよろしくお願いいたします」と語った。
競技は、28日(水)に公式車検を実施し、29日(木)はシェイクダウンに続いて前回と同じく帯広市内でセレモニースタートが切られ、翌30日(金)から十勝地方の林道を主体に3日間3レグ方式でオールグラベルコースを舞台に開催される。
<出場ドライバー>
2005年のWRC全16戦にフル参戦しているチーム三菱自動車モータースポーツには、ハリ・ロバンペラ/リスト・ピエティライネン(フィンランド)、ジル・パニッツィ/エルベ・パニッツィ(フランス)、ジャンルイジ・ガリ/グイド・ドゥアモーレ(イタリア)の3組のドライバー/コ・ドライバーのコンビが所属。各ラリーには2組/2台体制で出場しているが、第13戦ラリー・ジャパンには全3組を送り込み、3台の『ランサーWRC05』を投入する。
WRCでは、各ラリーでマニュファクチャラー選手権ポイントを獲得できるのは2台までとなっており、そのうちの1台にはシーズンを通じて同じドライバーを起用することが義務づけられている。三菱自動車チームにおいてそのファーストドライバーの任を負うのはロバンペラで、パニッツィとガリのふたりは交替で出場させている。
今年新たにチームに加入したロバンペラは北欧のラリー大国であるフィンランドの出身で、多くの同郷ドライバー同様にグラベル(ダート)ラリーを得意としている。2001年のスウェディッシュラリーで総合優勝を飾っているほか、多くの表彰台獲得経験を持つ。現在では少数派となりつつある豪快なドリフト走法を身上とするが、走りそのものは極めて安定しているドライバーである。なお、昨年のラリー・ジャパンには、プジョーで参戦し、総合6位でフィニッシュしている。
昨年からチームに在籍しているパニッツィは「ターマック(舗装路)キング」としてその名を轟かせてきた存在で、WRC通算7勝をマーク。三菱自動車チームでは今年の開幕戦ラリー・モンテカルロで『ランサーWRC05』を総合3位に導いた。そのドライビングは非常に繊細なコントロールの上に成り立っており、得意のターマックラリーのみならず、グラベルラリーでも素晴らしい速さを見せている。
そして「ジジ」のニックネームで呼ばれているガリは、三菱自動車チームが昨年実施した「若手ドライバー育成プログラム」からの抜擢。このプログラムは若手にワークスマシンを走らせるチャンスを与えたもので、そこで起用した3名の中でガリが最も将来的な可能性が高いと判断し、今年レギュラードライバーの一員に起用したものである。チームの期待どおり、第11戦ラリー・ドイツまでに5回のSSベストタイムをマークしてみせており、第7戦ラリー・トルコでは一時ラリーをリード。グラベル、ターマック、そしてスノーと、あらゆる路面で速さを見せるオールラウンダーでもある。
<出場車両 : ランサーWRC05>
2004年仕様『ランサーWRC04』から2005年仕様『ランサーWRC05』への変更点
- 車両全幅の拡幅(1770mm→1800mm)
- フロントおよびリヤフェンダー、リヤクォーターパネル、フロントバンパーの形状変更
- 新型サスペンションによるワイドトレッド化及びリヤサスペンションジオメトリーの最適化(第9戦アルゼンチンラリーより)
- 4G63型2.0L DOHCインタークーラーターボエンジンへの新型ウェストゲート、新型アンチラグバルブ、新エンジンマネージメントシステムの採用
- セミオートマチック式ギヤボックスの採用(ギヤシフトおよびクラッチ作動の電子制御化)
- アクティブセンターディファレンシャルの採用(第3戦ラリー・メキシコより)
三菱自動車が2005年シーズンのWRCに出場させている最新鋭のワールドラリーカー(WRカー)、それが『ランサーWRC05』である。同車は、三菱自動車がWRカー設計の最新技術をもって新規開発し、2004年シーズンのWRCに投入した『ランサーWRC04』の正常進化モデルであり、愛知県岡崎市にある三菱自動車技術開発本部モータースポーツチームと三菱自動車のモータースポーツ統括会社MMSPとの共同作業により開発した。『ランサーWRC05』は、実戦参加を通じて得てきた様々なノウハウを盛り込むことによって前年モデルからの大幅な性能向上を実現している。
効率を徹底的に追求した空力デザインをはじめ、基本仕様は前年モデルのものを受け継いでいるが、車両規定の変更に合わせて車両全幅を従来の1770mmから1800mmに拡幅(全長4200mm以上の車両のみが対象)。これにともない、フェンダーやバンパーの形状を若干変更し、さらなる効率化を図った。なお2004年から、ロールケージを含むボディ本体の最低重量が新たに設定されて320kgとなり、一部の外観部品は軽量素材に置換できるようになった。当然ながら『ランサーWRC04』もこれに対応しており、フェンダーはCFRP、リヤウィンドーやサイドウィンドーはポリカーボネートへと素材置換を行っている。
サスペンションは、車両全幅の拡幅を生かしてさらに長大なストローク量を確保したものを新たに設計。第9戦ラリー・アルゼンチンからはさらにアンチスクワット性(沈み込みにくいこと)を高めたジオメトリーへと大きく改良したリヤサスペンションを導入した。また、ダンパー(ショックアブソーバー)も前年モデルから大幅に性能向上を果たしており、総合的に路面へのタイヤの追従性能・接地性能を高めている。
エンジンは、ランサーエボリューションなどの市販車で好評の4G63型DOHCインタークーラターボエンジンを引き続き使用しているが、ランサーWRCではWRカー規則を存分に生かした開発を行い、市販モデルに比べて約80kgも軽量化。かつ、グループA時代を圧倒的な強さで制した原動力ともいえる低い回転域から分厚いトルクを発生するロングストロークならではの出力特性は受け継がれており、そのパフォーマンスは依然トップレベルにある。また『ランサーWRC05』では、スロットルオフ時にもターボの回転を落とさず再加速時の過給圧の追従性を高めるアンチラグシステムと、過給圧を適正に保つウェストゲートを改良。新しいエンジンマネージメントシステムの採用によってこれらを最適な条件で作動させ、大幅なエンジン性能の向上を実現している。
一方、前年モデルでは車両の基本性能の確立を優先するために採用を極力控えていた電子制御技術についても、この『ランサーWRC05』では段階的に導入している。まず、走行中はクラッチ操作を不要とし、ステアリングホイールに設けたシフトパドルで変速操作を行うセミオートマチック式ギヤボックスを採用。さらに、前年モデルではすべて機械式LSDとしていた3つのデフのうち、センターデフを第3戦ラリー・メキシコから電子制御式とした。
なお、タイヤについては今年から伊ピレリ社と契約し、同社の「Pゼロ」ラリータイヤを使用。ホイールは引き続き日本の遠菱アルミホイール社製を採用している。
<出場チーム : チーム三菱自動車モータースポーツ>
三菱自動車がワークス活動を行っているモータースポーツにおいて、その出場活動を担っているのが「チーム三菱自動車モータースポーツ」である。現在はWRCとクロスカントリーラリー(ダカール・ラリーおよびFIAワールドカップ)で展開しており、WRCチームはイギリスのラグビー、クロスカントリーラリーチームはフランスのボン・ド・ボーにそれぞれ拠点を構える。
2005年のWRCにおける三菱自動車チームはシリーズ全16戦に出場し、ドライバー、マニュファクチャラーの両選手権を戦っている。WRCとクロスカントリーラリーの双方においてチームを率いているのは、三菱自動車のモータースポーツ統括会社MMSPの社長を務める鳥居勲。三菱自動車の欧州と北米の開発拠点で車両実験を担当してきたエンジニアであり、WRCに参戦するマニュファクチャラーチームの中では最も若い代表者のひとりだが、優れたエンジニアリング能力と組織のマネージメント能力、そして豊富な海外経験を生かし、WRCでの王座奪回を目指す三菱自動車チームを強力に牽引している。
WRCチームがイギリス・ラグビーに構えている拠点は、長年「ラリーアート・ヨーロッパ」の名で親しまれてきたものだが、MMSPの設立とともに名称と組織を変更した。このMMSPにおいて、三菱自動車チーム初の日本人テクニカルディレクターを務めているのが田中泰男である。三菱自動車の技術開発本部モータースポーツチームで長年モータースポーツ車両の技術開発に携わってきた田中は、ラグビーのファクトリーで進めていくWRC出場車両の開発責任者であり、WRCの技術面全体を監修している。
WRCの現場における技術関係の責任者は主任ラリーエンジニアのロジャー・エストラーダ(スペイン)。『ランサーWRC05』のセッティングの決定や、トラブルが発生した際の解決方法や作業内容の決定・指示といった業務を担当する。チームマネージャーを務めるのはマルコ・パストリーノ(イタリア)で、チーム運営の実務を司っている。